ドゥカティのバイクといえば、多くの人が「L型エンジン」をイメージするのではないでしょうか。
実際にドゥカティは、長い間90度V型2気筒エンジンを採用し、「L型エンジン ドゥカティ」と言われるほど特徴的なエンジンを作り続けてきました。
しかし、なぜドゥカティは「2気筒エンジン」を選び続けているのか、また「Vツイン」との違いはどこにあるのか、疑問を持つ方も多いでしょう。
さらに「デスモドロミック」と呼ばれる独自機構にも注目が集まっています。
この記事では、「L型エンジン ドゥカティ」の歴史や特徴を詳しく掘り下げつつ、メリット・デメリット、今後の方向性まで幅広く解説します。
2.L型2気筒エンジンの特徴とメリットが理解できる
3.デスモドロミックの仕組みとデメリットを知ることができる
4.LツインとVツインエンジンの違いが明確になる
L型エンジン【ドゥカティ】の歴史と特徴
↑イメージ画像です:ラグジュアリーバイクワールド作成
・Lツインの特徴まとめ
・VツインとLツインの違いは何?
・【ドゥカティ】デスモドロミックとは?
・デスモをドゥカティが採用する理由
【ドゥカティ】2気筒をなぜ採用?
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ドゥカティが2気筒エンジンを採用し続けている理由は、スポーツバイクとしての理想的な特性を実現するためです。
2気筒エンジンは、単気筒よりも高回転域でスムーズに回転し、4気筒よりも低回転域で力強いトルクを発揮できます。
つまり、中低速から高速まで、幅広い回転域での扱いやすさとスポーティなパワー特性をバランスよく両立できるというわけです。
特にドゥカティが主力としてきたL型の90度Vツインは、高回転まで回しても振動が少ないため、高回転型のスポーツエンジンとしても優秀です。
また、バイクという特性上、エンジンの幅が狭いほど、俊敏な運動性に有利になります。
90度のV型2気筒(L型)はクランク軸が短く、横幅が狭いエンジンなので、軽快でスポーティな操縦性を実現することが可能なのです。
一方で、単気筒エンジンでは、高回転域で振動が大きく、パワーを上げると乗り心地が損なわれます。
4気筒エンジンでは、滑らかさは得られるものの、エンジン幅や重量が増加し、機敏さが失われがちです。
この点からも、2気筒エンジンは「適度なバランスを実現できる」エンジン形式としてドゥカティが好んで採用してきました。
これらの理由から、ドゥカティはスポーツバイクとしての性能と扱いやすさを両立するために、2気筒エンジン、特に90度の「Lツインエンジン」を積極的に採用しているのです。
Lツインの特徴まとめ
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Lツインエンジンは、ドゥカティが1970年代に採用を始めたエンジン形式で、現在でも同社の象徴的存在となっています。
Lツインは、前後のシリンダーの角度を90度とし、前側のシリンダーを水平に配置するという構造で、エンジンの形状がアルファベットの「L」に見えることから名付けられました。
Lツインエンジンの主な特徴として、まず振動が少なく、エンジンの幅が非常にコンパクトであることが挙げられます。
これは一本のクランクピンを2本のコンロッドが共有しているためで、クランクの幅を狭くすることができます。
そのため、バイクを傾けた際の俊敏さが増し、スポーツライディングに向いたエンジンと言えます。
また、Lツインは特に低中速域のトルクが豊かで扱いやすいというメリットがあります。
そのため、街中などのストリートライディングや、コーナーが多いワインディングロードでも、細かなギアチェンジを必要とせず、ライダーが感覚的にコントロールしやすくなります。
デメリットとしては、水平シリンダーのためエンジンのレイアウトが難しく、特定のフレーム形式に限定されやすいという点がありますが、ドゥカティはこれをモノコックフレームなどの独自設計により克服しています。
これらの特徴から、ドゥカティは長年Lツインエンジンを象徴的な存在として重用してきましたが、近年ではLツイン以外にもV4エンジンや単気筒エンジンの導入により、そのラインナップが広がっています。
VツインとLツインの違いは何?
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VツインとLツインは、基本的には同じ「V型2気筒エンジン」のカテゴリーに属していますが、レイアウトや特性に若干の違いがあります。
Vツインとは、2つのシリンダーがVの形状を描くように配置されたエンジンを指し、そのシリンダー角度(バンク角)はメーカーによって異なります。
例えば、ハーレーダビッドソンなどは約70度のVツインエンジンを採用し、独特な鼓動感や振動が特徴的です。
一方、ドゥカティが採用するLツインは、V型2気筒エンジンの一種ですが、シリンダーバンク角を90度として前側シリンダーを水平に倒した独自のレイアウトを持ちます。
その結果、エンジンの側面から見ると「L」字型に見えるため、「Lツイン」と呼ばれています。
Vツインと比較した際のLツインの特性としては、90度というシリンダー角によりエンジンのバランスが理想的となり、高回転域でも振動が少ないことが挙げられます。
また、クランクシャフトが短く、コンパクトに設計できるため、機敏なハンドリングにも優れています。
ただし、前側のシリンダーが水平配置されているため、エンジンの搭載方法が限られるというデメリットも存在します。
つまり、「Lツイン」と「Vツイン」の違いは、シリンダー角や配置のわずかな差により生じる振動特性、エンジン幅、そしてそれによる操縦性の違いにあるのです。
ドゥカティがLツインにこだわる理由の一つも、この90度という理想的なシリンダー角による振動の少なさと俊敏な操縦性にメリットを感じているからでしょう。
【ドゥカティ】デスモドロミックとは?
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デスモドロミックとは、ドゥカティが独自に発展させ、現在も採用し続けているエンジンのバルブ開閉機構のことです。
一般的な4ストロークエンジンでは、バルブが開くときはカムシャフトが押し下げ、閉じるときはスプリングの力で元に戻ります。
しかしデスモドロミックでは、バルブを開くカムと閉じるカムがそれぞれ独立して存在し、スプリングに頼らず、強制的に開閉を行う仕組みです。
デスモドロミックの最大の特徴は、高回転域でも正確かつ安定したバルブの動きを維持できることです。
通常、バルブスプリングを使う場合、回転数が高くなるほどバルブがスプリングの動きについていけず、浮いてしまう(バルブジャンプ)問題が起こります。
このバルブジャンプが発生するとエンジンが損傷する恐れがありますが、デスモドロミックでは強制的にバルブを開閉するため、そのリスクがありません。
これにより、高回転・高出力を安定して引き出すことが可能となっています。
一方、デスモドロミックには複雑な構造からくる製造コストの高さや、整備に高度な技術が要求されるなどの難点もあります。
メンテナンスを怠ると性能が著しく低下するため、オーナーにとっては注意すべきポイントと言えるでしょう。
デスモをドゥカティが採用する理由
ドゥカティがデスモドロミック(通称デスモ)を採用し続けるのは、単にブランドの伝統だからという理由だけではありません。
デスモドロミック機構は高回転域でのバルブの動きをスプリングを使う通常の方式よりも正確に制御でき、エンジンの性能向上に明らかなメリットがあるからです。
ドゥカティはレーシングマシンの開発で培った技術を市販車に積極的にフィードバックしてきましたが、デスモドロミックもその一例です。
MotoGPなどの高性能レーシングマシンでは、エンジンが極限まで高回転化されるため、バルブジャンプやバルブサージング(振動による異常なバルブ動作)がエンジントラブルの大きな原因となります。
デスモドロミックはそれらを防ぎつつ、安定して高出力を発揮できることから、レーシングマシンでの成功につながっています。
また、ドゥカティ以外のメーカーがデスモドロミックを採用しないのは、製造やメンテナンスにかかる技術的・コスト的ハードルが非常に高いからです。
つまり、ドゥカティは他社が実現しづらい高度な技術を「ブランドの独自性」として武器にしているとも言えます。
このようにドゥカティはデスモドロミックを通じて、性能追求と独自性を両立させ、他のメーカーとは明確に異なる存在感を確立しているのです。
L型エンジン【ドゥカティ】は今どうなった?
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・デスモドロミックのデメリットは?
・【ドゥカティ】2気筒の今後は?
・ドゥカティのL型からV型へ。新たな方向性とは?
ドゥカティの新しい4気筒エンジン
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長年、Lツインエンジンにこだわってきたドゥカティですが、近年新たなフェーズへと踏み出しています。
その象徴ともいえるのが、2018年に発売されたパニガーレV4に搭載されたV型4気筒エンジンです。
ドゥカティはこの新エンジンで、高回転でのさらなるパワーと滑らかな特性を実現しました。
V4エンジンはドゥカティ伝統のデスモドロミック機構を搭載していますが、2021年に登場した「ムルティストラーダV4」にはスプリング式バルブが採用されました。
これはメンテナンスの手間を減らす目的で導入された技術です。
具体的にはバルブクリアランスの調整間隔が、従来の2万4000kmから6万kmへと延長され、ライダーの負担が大幅に軽減されています。
こう考えると、ドゥカティはLツインだけでなく、V4エンジンによって新たな時代を築き、ユーザーのニーズに応えようとしているのです。
デスモドロミックのデメリットは?
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デスモドロミックは高性能エンジンに適した優れた機構ですが、実際に運用するうえで無視できないデメリットもあります。
主な欠点は「構造の複雑さ」と「メンテナンス性の低さ」です。
デスモドロミックは、吸気・排気のバルブをスプリングではなくカムで強制的に開閉するため、部品数が多く、製造工程も複雑になります。
その結果、製造コストが高くなり、生産コストが他のエンジンより高価になってしまいます。
また、この仕組みはバルブクリアランス(カムやバルブとの隙間)の管理が非常に重要です。
クリアランス調整には高い技術と専門知識が必要で、一般のバイクショップでは対応が難しいケースも多く、オーナーが手軽に管理できないのが難点と言えるでしょう。
こうしてみると、デスモドロミックは高性能を実現する一方で、所有するためのハードルが高い仕組みと言えます。
【ドゥカティ】2気筒の今後は?
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ドゥカティは現在、Lツインを中心とした2気筒エンジンから、徐々にV4エンジンへと軸足を移しつつあります。
ただ、Lツインエンジンが完全になくなるわけではありません。
現在でもスクランブラーシリーズやミドルクラスのモデルには空冷・水冷を問わずLツインが使われています。
特にテスタストレッタ11°と呼ばれる水冷Lツインは、低回転のトルクの豊かさと高回転域での扱いやすさを両立しており、依然として中型モデルを中心に根強い人気を保っています。
一方で、将来的には単気筒エンジンの新モデル「ハイパーモタード698モノ」も投入されることが決まっています。
これは、従来のLツインとはまったく異なる路線であり、新しいユーザー層の獲得を狙っていると考えられます。
つまり、ドゥカティは2気筒エンジンをすぐに廃止するのではなく、多様なライダーのニーズに応えるために、新技術の開発を進めながらもLツインエンジンを引き続きラインナップしていく可能性が高いと言えます。
ドゥカティのL型からV型へ。新たな方向性とは?
ドゥカティはこれまでL型の2気筒エンジンを代名詞としていましたが、近年、その方向性に新たな変化が起きています。
それがV型4気筒エンジンや単気筒エンジンへの展開です。
特に、2018年に登場したパニガーレV4に搭載される「デスモセディチ・ストラダーレ」エンジンは、ドゥカティ史上初めて量産市販車に採用されたV4エンジンです。
これはMotoGP由来の技術を採用し、高回転域でのパワーやスムーズさを追求したもので、まさにドゥカティの新たな象徴となりました。
さらに2021年には単気筒エンジン搭載の新モデルも登場しています。
2気筒エンジンが主流だったドゥカティが、単気筒を採用したことは非常に大きなニュースとなりました。
2気筒特有の扱いやすい低速トルクとは異なる、新たな乗り味を提案しているのです。
こう考えると、ドゥカティは単にLツインだけに固執するのではなく、時代やユーザーのニーズに応じて積極的に新しい技術を取り入れているメーカーだと言えるでしょう。
今後、Lツインがどうなっていくかについては明確にはされていませんが、多様なエンジンラインナップを展開しつつも、Lツインは伝統として引き続き残していくと考えられます。
ただ、技術革新を続けているため、今後さらに進化した形でLツインエンジンが登場する可能性も十分にあるでしょう。
L型エンジン【ドゥカティ】の特徴と歴史の総括
- ドゥカティのL型エンジンは90度V型2気筒エンジンの一種である
- L型エンジンは前側シリンダーが水平に配置される構造を持つ
- 振動が少なく、高回転域でもスムーズに回る特性を持つ
- エンジン幅が狭いため、スポーティで俊敏な操縦性を実現できる
- 単気筒よりも振動が少なく、4気筒よりも軽量である
- 低中速域でのトルクが豊かで街乗りにも適している
- 1970年代からドゥカティのスポーツバイクに広く採用されている
- クランク軸が短く、バイクの軽快なハンドリングに貢献する
- 特徴的な形状ゆえ、搭載できるフレーム形状が限られる
- ドゥカティは独自設計のモノコックフレームで搭載の制約を克服した
- デスモドロミック機構を組み合わせ、高回転域の性能を高めている
- 最近ではV4エンジンや単気筒エンジンなどラインナップを拡大している
- メンテナンス性向上のため、V4エンジンではスプリング式バルブも採用された
- 現在もミドルクラスのモデルを中心に根強い人気を持つ
- 今後もLツインを完全廃止せず、新エンジンと併存していく可能性が高い
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